車は日常生活に不可欠な必需品である。アメリカにおける所有台数の増加は、先にみたとおりだ。日本ではどうだろうか。生産台数において、一四年の長きにわたり、日本がアメリカを抑えトップを走り続けてきたが、一九九四年これに異変が起きた。現状を理解するため、データをみておこう。日本自動車工業会(自工会)が一九九五年一月二四日に発表した数字によると、日本の九四年自動車生産実績は、生産台数一〇五五万四一一九台で、前年比六・〇%減。四年連続で前年水準を割り込み、八〇年以降、最低の水準という。四年連続の前年割れは、四五年の自工会統計開始以来、はじめてのことだという。逆にアメリカは、一二三五万七四八六台の生産台数を示し、これにより日本は、一五年ぶりに生産台数でアメリカを下回った。不況の影響もあり、国内販売が九四年五月まで低迷を続けたことと、円高で輸出を減らし、海外現地生産に切り換える動きが続いたためとみられる。海外生産台数は、一一社集計で一五・二%増の四九五万台余。輸出台数の推計四四六万台を上回る見込みだ。ちなみに、国内生産における乗用車は、八・二%減の七八〇万一三一七台で、これも四年連続で前年を下回っている。しかしながら、トラックは〇・七%増の二七〇万三六九〇台、六年ぶりのプラスに転じている。レジャー用車がトラックに分類され、これが売れている点と、過積載規制の強化に応じて小型から中・大型トラックに代替する動きが続いたためとみられる。さしもの自動車生産王国・日本も、円高と長引く不況の影響で、生産台数トップの座を滑り落ちるかにみられるが、これがそうともいえず、なかなかしぶとい動きも示している。自工会が前出データと同時に発表したものによれば、一九九四年一二月の生産実績は、四輪車全体で前年同月比九・四%増/八六万三三九三台となり、三ヵ月連続のプラス数値を示した。なかでも、乗用車は五・九%増となり、九三年三月以来、1ヵ月ぶりにプラスに転じている。「在庫が適正水準になったことで販売が伸び、それが生産増加に結びつくようになった」と、自工会は、その要因を説明している。要するに、車は相変わらず売れているということだ。もちろん、大型消費財の買い控えは、不況を反映してあったことも事実。しかし、不景気になれば質実剛健に走るのは、いつの時代も同じ。一家で乗るなら、レジャー用ビーグルの方がいい。ここ数年、人気を集めはじめたオートキャンプも、これに輪をかける。美しい外観だけの観光地、華やかなのは姿形だけで、その内実はお粗末なホテル、旅館に泊まるなら、じっくり、質と実をともなったアウトドアライフのオートキャンプの方が数段楽しい。これに気づいた消費者が、レジャー用ビーグルに走った。構造はいたって単純である。多くの人が指摘するとおり、一般大衆に金がないかといえば、必ずしもそうではなく、企業不況をきっかけに、遊び方にも知恵、工夫をこらそうという考え方だろう。バブルに浮かれていた頃に比べるなら、ずいぶん知的になったわけだ。車のつくり方も、効率を考えるなら当然、その仕組みを根本から変え、海外生産拠点にシフトした方がいいにきまっている。海外でつくって輸入する。つくり方、売り方が変化しただけで、需要はある。今般の阪神大震災においても、車の存在は功罪ふだつながらあるという事実を認めざるを得ない。初動態勢において、緊急車両の進路を妨げたのは多くの自家用車である。しかしながら、この自家用車によって物資調達や伝達、ある種の緊急避難が行われたことも、否定できない。車というのは乗って快適、停めておくと邪魔という両面がある。全員が、走る快適さと利便性を追う結果、渋滞という不都合が生じる。このあたりを整理するなら、車が人間に与える恩恵は計り知れない。断言できるが、これからも日本の車社会は進行するだろうし、それはなくてはならない“必需”という要素から成り立つ。不況だろうが、経済的に逼迫しようが、必要であるなら車は買われるだろうし、また売れる。しかし、そろそろ本気で車の。使い方”をわれわれ全員が考える時にさしかかっている。車社会は変わらないだろうし、もはや変えられるものではない。とするなら、真剣に知性ある使い方を学んでいかなければならない。いままでは単純に、便利なものを与えられて喜々としてそれを使っていたが、飽和状態に近くなって、逆に災いになっている面がある。知性ある車の使い方とは何か。根本のテーマに戻るが、それを停める、収納する場所を、適正規模できちんとつくる。これしかないのである。
株式会社ユアー・パーキング