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気迫と活気に満ちた市場

旅行案内には「気迫と活気に満ちた市場」とあったが、たしかに、見たこともないような野菜、果物、魚貝類が山のように並んでいる。売手と買手のかまびすしいやりとりの傍を、カゴを頭の上にのせた女たちがせわしくなく通り過ぎていく。そんな様子にカメラを向けたくなり、奥へ入っていったが、どうも様子がおかしい。店のおじさん、おばさんの目付きが険しいのである。周囲をうかがうと、強面のお兄さんも、こちらをにらみつけるようにしている。出発前に読んだ「おだやかな国民性」という指摘とは少し違うのでは、と心配になる。すぐそばのトタン板が大きな音をたてた。誰かが石を投げつけたらしい。あわてて、理由もわからないままに近くのお兄さんに会釈をして、足早に市場を抜け出した。旅行者にはわからない失礼なことがあったのか、カメラをぶら下げていたのが不用意だったのか、理由は別にしても、ガイドもなしに不遠慮にズカズカ入りこんだのはまずかった。車に戻った時は、下着は汗でびっしょりぬれていた。